Thoughts on Plymouth Brethren History and Characteristics

プリマス・ブラザレンの歴史と特徴

2) ブラザレン前史~ヨーロッパおよび大英帝国を中心として(2) 経済史的側面

本日は、ブラザレンが生まれるまでの経済的側面について触れていこうと思う。

イギリスの海外進出とスペイン無敵艦隊との海戦

16世紀末のイギリスは、スペイン無敵艦隊との海戦で、スペインの無敵艦隊を撃破し、東大西洋におけるかなり広範な制海権を取得し、海外との交易に乗り出し始める。しかしイギリス海軍といえども、その徴兵は酒場で酔っ払いをだまして半ば強制のような形で徴募してくるようなかなり粗っぽい水兵徴募をしていた。映画、パイレーツオブカリビアンの第1作目には、水兵が集まったかと酒場で航海長に尋ねるシーンが出てくる。(パイレーツオブカリビアンの予告編。55秒あたりに酒場のシーンが出てくる。)

 

また、無線もなくレーダーもない中で操船するわけであるから、船団から離脱した舟が発生する、あるいは船団そのものが海賊団になるような例もないわけではなかった。また、逆にフランシス・ドレークのように海賊上りが海軍提督になるなど、かなり無茶な登用もあった。

大航海時代と重商主義と国富の蓄積

そして、大航海時代を迎え、西インド諸島、いまのカリブ海辺りでの胡椒等の香辛料や銀や金といった貴金属、そして、アフリカから大西洋を渡り西インド諸島での奴隷市場で売り抜けをする奴隷貿易等が行われる中で、大英帝国の国富が貴金属や宝石で蓄積されたり、香辛料などの貿易のさや取り(輸入先の西インド諸島での価格と輸出先の西欧での価格差がまるまる利益になる裁定)取引で増加して行った。そして重商主義が発生する。これらの物資の交易を通して、イスラムとの地中海オリエント貿易で利益をあげていたイタリア諸国はその経済的優位性を失っていくことになる。

産業化時代の素地

16世紀ごろまでの英国国内では、それまでの一人の職工が全作業工程を担当し、完成品とするクラフトマンシップの時代がまだ続いていたが、17世紀ごろから、本来的な意味での分業型の作業工程中心としたワークショップへと変わっていく。この時期毛織物工業で実力をつけ、経済的実力を背景に爵位を得るものなども出始め、新興貴族が生まれ始めた時期であり、それに伴い、社交界の社会的意義が重視されるようになっていく。

産業革命の時代

そして、ワットにより1769年に石炭火力による蒸気エンジンが発明され、それまで、人間、牛馬、水力、風力などの出力の低い、あるいは安定性に欠ける動力に代わり、機械的に一定の出力をもち、定常的に動作するエンジンを人類は手にするようになり、鉄道、水運、運河の掘削、外洋船、鉱山開発、鉄鋼業、食品加工業などが一気に機械化され、産業革命が進んでいき、大量生産、大量消費時代へと突き進み、またその経済規模の拡大に伴い、国府が一層増加し、科学技術が進展し、英国は植民地開発に乗り出し、大英帝国は7つの海を支配すると言われた時代を迎える。

こういう時代で、最先端であるためには、数字が扱え、計算できる会計能力、契約の締結とそれに伴う識字能力が極めて重要になっていくため、文字を読む能力をつけた商工業者が優位に立つことになり、小校舎子弟向けの学校が設置され始め、数字や文字の利用する能力が庶民にも広がる。つまり、さほど豊かでなくても、小金持ちクラスでも文字へのアクセス可能性が増え、そして、その結果として、啓蒙主義時代に大量に出版されたニューメディアである図書や雑誌が一気に広がっていくことになる。

文字へのアクセスは聖書へのアクセス

従来のラテン語聖書中心の時代(カトリック教会では、現在ではラテン語聖書が使われることはほぼないが、前世期中葉まではラテン語聖書が重要視された)には、聖職者やラテン語操作能力を受けたもの(パブリックスクールという貴族の子弟が行く私立学校やグラマースクール、そして、大学卒業者)がその操作能力があるり、聖職者となり、聖書へアクセスできただけであったが、世俗語である英語に翻訳された聖書である欽定訳聖書King James Versionないし、Authorized Version(と言ってもティンデル訳聖書がかなり利用されている形跡があるらしい)を、商工業者階級でも可能な人々が出始め、自分たちの言語で、自分たちが聖書を読めるという感動があったのがこの時代である。なお、欽定訳聖書は1611年、改訂版が1769年に出版される。それまではキリスト者でも聖書が読めない人々は非常に多かったのである。能力がなく聖書が読めない人にとって、この時代の17世紀とか18世紀の文字が読めないキリスト者の方が、現代日本のキリスト集会派のキリスト者集団で「聖書を読め、読め」と能力に応じることなくごり押しされる時代の人々より、考えようによっては幸せかもしれない。

世の中には、できないこと、無力であることに伴う恵もあるものと確信している。できることが必ずしもよい、というわけではない、と思っている。

産業革命がもたらしたイギリス社会のひずみ

産業革命が進み、様々な作業でのエンジンを利用した機械化が進展したとはいえ、現代の工業では機械(資本)だけでは生産ができない。生産には資本と労働が必要なのであるが、これは、大学1年生クラスのミクロ経済学の教科書には必ず書かれている内容である。経済学部の4年生でも、この意味がわかっていない学生がいるのは、非常に困ったものであるが。

その結果、生産現場であった都市や炭鉱、工業地帯では、産業革命の結果、労働力不足が発生する。経済学の始祖ともいうべき、アダム・スミスの見えざる手の話しではないが、こうなると賃金は都市部で高騰し、高騰した賃金を目指して地方からもと農民などの労働者が当てもなく都市に出てきて、浮浪民やホームレスが都市に生まれる。なお、現在のアメリカ経済学教育は、そもそも論からいって、Political Economyという学問体系であって、神学部の最終学年に学長クラスの教員が社会における公正とはいかなるものか、それを聖書から考えるときに現実の社会との対比においてどのように考える学問体系であるPolitical Economicsとして始まっている。その意味で、かなり学部として分離するのは後年になってからである。

基本的の欧州の労働賃金慣行は、現在もなお、基本は週給制度であり、基本週を単位に雇用関係が生まれる。このことから、Two Weeks Noticeという退職慣行に関する語が生まれる。今年の東大阪での新春合同学び会での通訳者の方は、講師のこのジョークをうまく伝えきれておられなかった。大変残念であった。あそこは講師会心のギャグだったのに。

Two_weeks_notice_ver2
映画 Two Weeks Notice

劣悪な炭鉱労働 ブラック企業の原型

この産業革命時代には、組合を形成しない子供が炭鉱労働をさせられたり、大人は教会に行くので、日曜日に子供を使って採掘させる、そして、小さな体を利用して、採炭率の効率を上げる、炭鉱では、炭鉱経営者が、商店を経営するないしは商店主と結託して商品の販売価格を高めに設定し、給与を回収する。労働者の賃金を炭鉱経営者同士で結託し非常に低賃金に抑えるなど、ありとあらゆる手で利益を手にしようとした。いまのブラック企業まっさおの手段が使われた。なお、賀川豊彦先生が神戸ではじめられた生活協同組合(現コープこうべ)は、そもそも、この大英帝国での炭鉱経営者による搾取に対抗するための共同購入による搾取の回避運動をモデルとして生まれたものであり、その精神を現在もなお引き継いでいる。

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炭鉱で働く児童労働者

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コープこうべ 本部

実はブラック企業の原型はイングランドの産業革命時代の炭鉱経営企業にあると言ってよいかもしれない。なお、現在の財務大臣のご一族は九州の方で過去炭鉱を経営されておられたように記憶している。

危険な炭鉱労働環境

炭鉱は、現在でもそうだが、落盤、炭塵爆発、露天掘りでもない限り坑道崩壊など事故が起きる。当時始まり始めた鉄鋼業や鋳鉄業でも、高温の熔融した鉄を扱う危険職場であり、自己が多かった。建設現場でも現在のような安全対策があろうはずがなく、石積みが崩れる、煉瓦の壁が崩落する事故などや落下事故は多かったようだ。こうなると、孤児や浮浪者が街にあふれることになる。これらのものは、すりや万引き、窃盗、強盗など、彼らにある俊敏さを最大限生かさざるを得ない路上生活の日々が待っていたのである。

劣悪な都市の生活環境

ブラザレンが誕生した19世紀という時代は、ロンドンやベルファスト等の大都市は世界最悪の大気汚染ですすだらけ、道路は、馬車をひく馬の排せつ物だらけ、用心していないと、水洗トイレもないために人間からの排せつ物が空から降ってくる、水道水を飲んでも、下手をするとコレラに感染、といういまの英国からは想像もつかないろくでもない状態が待っていたのである。

Snow-cholera-map-1
Snowによるコレラマップ(黒いところがコレラ感染者の自宅)
疫学分析の最初のGIS的な地図の利用例

次回、政治史的側面について触れる。

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投稿日: 2015年4月10日 投稿者: カテゴリー: キリスト集会の原型, ブラザレン前史, ブラザレン史

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