Thoughts on Plymouth Brethren History and Characteristics

プリマス・ブラザレンの歴史と特徴

プリマス・ブラザレン運動に影響を与えたオックスフォード運動

プリマス・ブラザレン運動は、19世紀の国教会分離派の一つであることは既にご紹介したし、それは、英国内において、18世紀以前の多様な国教会分離派からの影響を受けていることは指摘したとおりである。しかし、この運動自体が国教会分離派であることから明らかなように、この運動の形成に決定的に影響を与えているのが、当時の大英帝国国教会の状態である。

◆ 19世紀の国教会改革運動

当時の大英帝国国教会は、スコットランドでの改革派教会、およびカトリック教会、アイルランドでのカトリック教会の活動に影響を受け、その基盤の毀損に悩んでいたし、国家と一体化し国家のために奉仕する教会という側面(なぜならば、英国国教会の代表は、世俗的な王または女王である)をもつため、ピューリタンと呼ばれる人々の様に本来の教会の立場を維持すべきだとする人々も存在はした。なぜそのような批判があるかといえば、中世から近世にかけてのキリスト教会が、基本的に、John H Yoder ジョン・H・ヨーダーが指摘するように、コンスタンティヌス的教会としての側面をもち、世俗権力への預言者性が弱まり、世俗権力に奉仕する側面、ひどい場合、国家の権威の下に置かれるような側面もあったからである。そして、このことに納得しかねる人々が16から18世紀にかけて、ピューリタンをはじめとする国教会分離派を形成した。その意味で、これらの人々は、当時の教会と国家のあり方に対して批判的な立場に立ち、一種の預言者性をもって社会に対峙したと言えるであろう。

そして、19世紀の国教会の政治的、宗教的、信仰的な態度に疑問をいだいて、アイルランドの国教会の集団は、聖餐式をはじめ、それは後に、ほかのキリスト者の人々からプリマス・ブラザレン(プリマスから来た、兄弟、兄弟、というやつら 位の総称であり、蔑称)と呼ばれた運動体や、その他にも類似のキリスト教の分離派的な運動体があったことが、Tim Grass(2007)のGathering to His Nameに見られる。

◆ オックスフォード運動の概説とブラザレン運動のかかわり

それと同時に、国教会の中でのオックスフォード大学を中心とした改革運動がおこる。それが、John Henry Newman ジョン・ヘンリー・ニューマンらがオックスフォード大学を活動の拠点にしつつ行っていったためオックスフォード運動(トラクタリアン運動、トラクト運動)と呼ばれる一種の宗教改革運動である。これは、本来、英国国教会内部の改革運動であり、国教会が祈祷書による統一という原則、Via Mediaの原則からなるため、かなり幅の広い信徒群を含んでいたことに由来する。

先にもふれたように、当時の国教会の姿を「本来の教会の姿」へと変質させようという国教会内部の宗教改革運動とそれに伴うオックスフォード大学の学問に関する態度への批判にまつわる論争であると言ってもよいと思われる。

ところで、宗教改革運動と言った時、どこを理念系とするのか、ということが問題になるが、このオックスフォード運動では、カトリック教会的なもの、すなわち、大英帝国国教会用語でいえば、High Church(ハイチャーチないしは高教会)なもの、のうちに求めたものと思われる。のちに、このジョン・ヘンリー・ニューマンは、大英帝国国教会から、カトリック教会に転回し、枢機卿となる。

ジョン・ヘンリー・ニューマン(枢機卿)

オックスフォード運動自体は、国教会内の改革運動、オックスフォード大学の懐古趣味的な改革運動とみてもよいが、それよりは、一種の宗教改革運動と見たほうがいいだろう。むしろカトリシズムを原点と定めた、信仰復興運動といえるのではなかろうか。

ところで、実は、オックスフォード運動の代表的人物John Henry Newmanの弟Francis William Newman フランシス・ウィリアム・ニューマンであり、Anthony Norris Grovesのバグダッド行きに同行しようとしている。ただし、彼は、成人バプテスマを受けていないため、動向を取りやめているが、グローブスの伝道活動を熱心に支援している。このフランシス・ウィリアム・ニューマンも、兄のジョン・ヘンリー・ニューマン同様、オックスフォードで学んでいる。Newman兄弟は、その方向性が異なるものの、基本的には、キリスト教の原点回帰運動を行ったのであり、兄のジョン・ヘンリーはその原点をカトリック教会に定め、弟のフランシス・ウィリアムはその原点をカトリック以前の古代教会的なものに定め、原点回帰運動、本来のキリスト教の姿に戻ろうという運動を試みたと言えるであろう。その意味での原点回帰運動として、このオックスフォード運動は、別種のキリスト教の原点回帰運動としてのキリスト集会に回帰の方向性を示すという点で、一定の役割を与えたといえよう。


フランシス・ウィリアム・ニューマン

なお、このオックスフォード運動との相互影響は、近年の研究たとえば、Nathan Delynn Smith(1986),Roots, Renewal and the BrethrenやNeil Dickson(2003), Brethren in Scotland 1838-2000 等では明確に触れられている。

◆ オックスフォード運動関連資料

このオックスフォード運動の概観としては、やや記述が古いが、下記のリンクの八代(1965)が分かりやすい。当時神戸の松陰大学におられた八代欽一氏(日本聖公会の故八代斌助首座主教であった方の御子息であることは御親族の方からの確認済み)である。この論文では、プロシア国と大英帝国とのエルサレム主教座問題(プロシア国王と大英帝国国王は、基本的に当時姻戚関係にあった)もこのオックスフォード運動の前景としてあることなどを含め、オクスフォード運動の概観が述べられており、それが前期、後期で運動の形態論が変わっていること、そもそも、このオックスフォード運動自体、その発端がアイルランド国教会の非国教化問題がその出発点であることなどがよくわかる。

https://shoin.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=544&file_id=22&file_no=1

以下に紹介する清滝論文は、社会ないし政治的な側面とオックスフォード運動を論じたものであり、当時の英国内においてディセンターとよばれ、異端的とされた非国教会のキリスト教徒との視点からオックスフォード運動が議論されている。その意味で、このブログ記事 3)ブラザレン前史~ヨーロッパおよび大英帝国を中心として 英国国教会分離派とその形成 で述べて来た分離派の人々との関連で、オックスフォード運動あるいはトラクト運動をとらえようとしている。特に、この論文で紹介されている、広教会主義をオックスフォード運動は非であるとしたわけであるが、逆にその広教会主義を極端に押し進めた概念として、キリスト集会の理念があるように思われる、その意味で、清滝論文でウルトラプロテスタンティズムとして指摘されている概念とキリスト集会の概念について、考えることができるのではないだろうか。

なお、清滝論文では、オックスフォード運動のあと、オックスフォード大学の研究の体質が変わるほど大きく影響した運動であったことが指摘されている。

http://repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29596/rhg026-05.pdf

以下の松永論文では、当時の英国の科学界における理性的な理解の神学や信仰面への流入に対する抵抗、自然科学と神学の体系との対立に関して、科学の独善性と言うか、科学が自然神学から離れていき、独自の論理をもち、紙の言葉の表れとしての自然理解という視座をもちえなくなったことに関して、否定的な視座を向けている。その意味で、プリマス・ブラザレン運動の関係者の科学理解や科学に対するものと同じような論理構造をオックスフォード運動が内包していたことを指摘している。

http://ci.nii.ac.jp/els/110004696354.pdf?id=ART0007434964&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1427942195&cp=

近藤論文では、ピュージンという人物を通してのオックスフォード運動であり、建築として表象されるカトリック精神と教会論とのかかわりについて、オックスフォード運動が与えた影響などが触れられている。

 http://serve.seigakuin-univ.ac.jp/reps/modules/xoonips/detail.php?id=AN10068733-0183-065

これら以外にも、以下に示す寺本論文のように、英文学に大きな影響を与えたオックスフォード運動に関する論文もある。

http://ci.nii.ac.jp/els/110007535513.pdf?id=ART0009370759&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1428042694&cp=

もう少し詳しく学習されたい向きがあれば、コメントをいただければ、いくつかの英文の参考文献を改めてご紹介してみることも検討する。

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